2018-07

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畑野智美「消えない月」

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出版社に勤務する松原とマッサージ師のさくら、2人は、付き合いはじめ、やがて別れる。
それで終わりのはずだった…。
加害者と被害者、ふたつの視点から「ストーカー」に斬り込んだ衝撃作。『yom yom』連載を単行本化。




ストーカー物ってことで、結末はある程度予想できます。
だって、「される側」のさくらがあまりに優柔不断かつ甘い!

自分のスマホを渡して、男名前の電話帳を消されていくのを黙って見てるって、どうよ?
部屋の鍵を持って行かれてるのに、出勤ローテとか実家の住所とかをすぐ目につく場所に置いたままとか。
危機感なさすぎでしょ。
普通、鍵付け替えるよね?たとえ2万かかったとしても。

そういう始まりであるので、さくらに対して同情心が持てない。
この男は変!っていうのは結構早い段階でわかると思うんだけどな。
外見や家庭環境的に”優良物件”に見えたから、目が曇ったのか?
超イライラさせられました。

・・・という、あり得ないことだらけの序盤は、物語を盛り上げるためのわざとらしい作為としか思えない。
これでは、実際にストーカー被害に遭われた方のイメージが悪くなってしまいそう。


だけど気になったのはそこだけで(・・・っていっても結構あったね)、気味悪さと緊迫感はすごかった。

さくら松原の語りが交互に語られ、特に「する側」の心理が詳細に分析されている。

ストーカーをする側は、かなり論理的思考(超自分に都合がいい論理)をし、多大なる努力をしている、というのがよくわかる。
そこがめちゃくちゃ怖いし不気味。

さくらの言動もかなり気持ち悪いけど、追い詰められるとこうなるのかな~?
人を頼るなら、もっと全面的に頼らなければ。中途半端は一番ダメ。
「自分さえ我慢すれば」みたいな考えに陥ってしまう過程は、一種の洗脳状態に見えた。

「あくまで小説の中でのお話、自分には関係ない」という思いがあるから、こんなふうに客観的に読めるんだろうけど、
実際にストーカーされた経験がある人や女の子の親だったら、とても冷静には読めないでしょうね。

ラストは「どうぞご勝手に」って感じ。


それにしても、追いかける側と追いかけられる側っていう状況下で見る月って、かなり不気味なものですね。
内容とタイトルがピタッと一致しました。

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宮西真冬「誰かが見ている」

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ブログに虚偽の「幸せな育児生活」を書く主婦、年下の夫とのセックスレスに悩むアパレル店店長、ストレスで過食に走る保育士、円満な家庭を築いているように見える主婦…。
女性4人が繰り広げる極限のサスペンス。



第52回メフィスト賞受賞作


”隣の芝生は青い”的な???
ミステリ的仕掛けも少しあり、なかなか好みの作品でありました。

著者の宮西真冬さん、これがデビュー作ということだけど、女性ならではの目線で緊迫感のある心理サスペンスに仕上がっていて、今後に期待大です。


登場する4人の女性たちがそれぞれ何かしらの事情を抱えている。
それがいかにも現代的で「ありそう~」って思えるものだったから、ついついのめり込んでしまいました。

SNSで鬱憤を晴らす気持ち、見栄を張ってしまう気持ちもわかるし、結構どこにでもある落とし穴かもしれない。
女性から見た不満メインだけど、男性側にもそれなりに(笑)、言い分はあるんですよね。
やっぱり夫婦であっても「察して」っていうのは難しい・・・・・


意外にも後味がよいラストになっていたのもメフィスト賞としては珍しい。
確かに”できすぎ”ではあるものの、イヤミなご都合主義ではなく、こういうラストもアリかも。

白井智之「少女を殺す100の方法」

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名門女子中学校の鍵のかかった教室で、生徒20人が死体で見つかった。
教頭は、警察よりも先に犯人を捕まえようと目論むが…。
少女20人の死をテーマに紡がれる5つの本格ミステリ。
『小説宝石』掲載に書下ろしを加え書籍化。




各短編が最終的につながるのか?とか、あれこれ深読みしてしまった自分、無駄な労力でした(^_^;)
収録された5作の短編は、特に繋がりはなく、サトコって名前が複数出てくるものの、同一人物ではない。
ただ記号的に使いやすい名前ってこと?

とにかく少女がたくさん死ぬし、殺され方も多種多様。
まさにタイトル通りなお話で・・・・・

”少女を殺す100の方法”というよりは、”100人の少女を殺す方法”って方が合ってるかな。
一つの方法で20人死ぬわけだから。
・・・な~んて、細かいことはどうでもいい。
とにかくしっちゃかめっちゃか。あり得ない!

でも考えてみれば、この作家さん、いつも奇想天外・荒唐無稽な作風。
わかってて、もう3作読んじゃった私。
嫌いじゃないんですよね~

殺人の意味とか辻褄なんて、あったもんじゃない。
かなりグロいけど、深く考えずに読みたい気分の時とか、タイミングが合えば楽しめるかと思います。


そうそう。”ノックスの十戒”って初めて聞きました(←ミステリ読みのくせに)。
作家がミステリを書く上で守るべきルールなんだけど、最近のミステリ小説はこういうの関係ないよね。
「少女」殺人事件はパロディっぽくて面白かった。

福田和代「天空の救命室 航空自衛隊航空機動衛生隊」

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小牧基地にある航空機動衛生隊。
大型輸送機に積み込まれた“空飛ぶICU”を使って、緊急を要する患者を遠隔地の医療機関へ送り込む。
医療チームと輸送機の機長が連携プレーで、預かった命を守る! 『読楽』連載を単行本化。




前回の記事から間が空いてしまいました。
豪雨・旅行といろいろあったせいもあるのですが、何よりこの本、まったく進まない
福田さんにはライト系は合わないんじゃないのかな~?

”航空機動衛生隊”という、初めて聞く航空自衛隊内でのお仕事小説であり、自衛官でありながら医師でもある(医官)内村の成長物語でもある。

せっかくこういう設定なのだから、もっとこの部署の特性を生かしたお話であってほしかった。

ほとんどが地上でのお話。
航空自衛隊設定の必要がある話って、説明を兼ねた一話めだけなような・・・
そしてその出だしが魅力的でないために、後に続く話も気持ちが乗らないまま。

ラストのお話はグローバルで緊迫感はあったけど、かなりご都合主義な気もするし・・・・・。
ちょっと、ごめんなさい。な作品でした。

ただ、愛知県小牧市の自衛隊基地には、航空機動衛生隊のほかにも特色のある部隊が揃っていること、
航空機動衛生隊が設立されたきっかけが阪神・淡路大震災だったことは、知識としてインプットされました。


道尾秀介「風神の手」

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彼/彼女らの人生は重なり、つながる…。
章を追うごとに出来事の<意味>が反転しながら結ばれていく。
数十年にわたる歳月を、ミステリーに結晶化した長編小説。
『小説トリッパー』『朝日新聞』掲載を単行本化。




短編がラストでつながる・・・多分好きなやつ!
ビビッと来た!
なのになぜか時間がかかってしまった。

文章・表現がキレイで丁寧に読むからだと思うんです。
”風の始まり”ってすっごく素敵な表現!

でも唐突に語り手が変わる点はなんとかならないのか?
「え?これ誰の話?」となって、何度も前に戻ってしまった。

あと、昔の田舎の遊び、くらげパチンコやら万華鏡を使った撮影法なんかがイメージするのが難しかった。
これ、結構重要なモチーフなんだろうな、というのがわかったから頑張ってみたんだけどなー


事情のある家庭の子供の話で、ただ暗いだけかと思ったら、ラストは大団円で。
バタフライエフェクト的なお話、大好き。
(やや繋がりすぎなきらいはあるけど)


道尾さんといえば、昔は”暗い・重い・苦しい”というイメージ。
でも最近はこういうのも多い。
私は前者の(昔の)道尾作品の方が好きだけど、こっちの道尾さんもいいな、と思えた作品でした。

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プロフィール

きさらぎ

Author:きさらぎ
 
ミステリ・サスペンス小説が好き。
あと医療系も。

敬愛する東野圭吾さんの作品は、エッセイも含めコンプリートしました。
中でも一番のお気に入りは
「白夜行」♪

 

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